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下半期 芥川賞、直木賞 受賞作発表

第170回2023年下半期

芥川賞、直木賞 受賞作

1/17(水)発表

★芥川龍之介賞
⚫︎九段理江(くだんりえ)
「東京都同情塔」
九段理江さんの中編小説『東京都同情塔』は、2023年12月号の『新潮』に初掲載されました。
本作は、犯罪者が同情されるべき人々であるという考え方から、犯罪者が快適に暮らすための収容施設となる高層タワーが新宿の公園に建てられるという未来の日本を舞台としています。
本作は、日本人の欺瞞をユーモラスに描いた現代版「バベルの塔」と評されており、言葉と建築をテーマにした小説です。ゆるふわな言葉と、実のない正義の関係を豊かなフロウで暴く、生成AI時代の預言の書とも評されています。

他候補作品
・安堂ホセ(あんどうほせ)
「迷彩色の男」

・川野芽生(かわのめぐみ)
「Blue」

・小砂川チト(こさがわちと)
「猿の戴冠式」

・三木三奈(みきみな)
「アイスネルワイゼン」

▪️受賞者紹介
九段理江
1990年 埼玉県浦和市生まれ。
作家デビュー前に、
石川県金沢市の国際ビジネス専門学院で、
非常勤講師を務め、
23歳頃金沢市の古書店、オヨヨ書林でアルバイト。
2021年 「悪い音楽」でデビュー。
〈作品〉
「悪い音楽」(第126回文學界新人賞受賞)
「Schoolgirl」(第166回芥川賞候補、第35回三島由紀夫賞候補、芸術選奨新人賞受賞)
「しをかくうま」(第45回野間文芸新人賞受賞)
「東京都同情塔」(第170回芥川龍之介賞受賞)
★直木三十五賞
⚫︎河﨑秋子(かわさきあきこ)
「ともぐい」 
河崎秋子による小説『ともぐい』は、明治後期の北海道を舞台に、人里離れた山の中でひとり野生の動物を撃って暮らす猟師の物語です。
この作品では、猟師というより獣そのものの嗅覚で獲物と対峙する男、熊爪が登場します。熊爪は、ある日、血痕を辿った先で負傷した男を見つけます。男は、冬眠していない熊「穴持たず」を追っていたと言います。
この作品では、人間と獣の業と悲哀を織り交ぜた、理屈なき命の応酬が描かれています。狂暴な熊との死闘も印象的ですが、熊の牙から唾液が垂れ下がるシーンは映画エイリアンのような悍ましい姿とも重なります。

⚫︎万城目学(まきめまなぶ)
「八月の御所グラウンド」
万城目学の小説『八月の御所グラウンド』は、京都御苑内のグラウンドを舞台に、友人につき合って草野球大会に出場した男子大学生が、死んだはずの名選手らしき人物に出会い、ともにプレーに興じるファンタジー小説です。
本作は、京都を舞台に、過去との不思議な巡り合わせを描いた青春小説で、2篇が収められています。女子全国高校駅伝にピンチランナーとして挑む、絶望的に方向音痴な女子高校生と、謎の草野球大会に借金のカタで参加する羽目になった大学生の物語です。

他候補作品  
・加藤シゲアキ(かとうしげあき)
「なれのはて」

・嶋津輝(しまづてる)
「襷がけの二人」

・宮内悠介(みやうちゆうすけ)
「ラウリ・クースクを探して」

・村木嵐(むらきらん)
「まいまいつぶろ」

▪️受賞者紹介
河﨑秋子
1979年 北海道野付郡別海町生まれ。
北海学園大学経済学部卒(文芸サークル所属)
ニュージーランドで1年間、綿羊の飼育技術を学ぶ。
帰国後、実家で酪農に従事の傍ら綿羊を飼育、出荷。
2015年「颶風の王」(ぐふうのおう)にてデビュー。
動物と北海道の近現代史を題材とした作品が多い。
北海道史の知識は、学生時代に市町村史や歴史資料をアーカイブ化する手伝いのアルバイトをした経験が生かされているという。
〈主な作品〉
「颶風の王」(三浦綾子文学賞、JRA賞馬車事文化賞受賞)
「肉弾」(第21回大藪春彦賞授賞)
「土に贖(あがな)う」(第39回新田次郎文学賞受賞、第33回三島由紀夫賞候補)
「絞め殺しの樹」(第167回直木賞候補)
「ともぐい」(第170回直木賞受賞)

▪️受賞者紹介
万城目学
1976年 大阪府生まれ。
京都大学法学部卒。
2006年「鴨川ホルモー」(第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞)にてデビュー。
実在の事物や日常の中に、奇想天外な非日常性を持ち込むファンタジー小説で知られる。

〈主な作品〉
「鴨川ホルモー」
「鹿男あをによし」(第137回直木賞候補)
「プリンセス・トヨトミ」(第141回直木賞候補)
「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」(第143回直木賞候補)
「とっぴんぱらりの風太郎」(第150回直木賞候補)
「悟浄出立」(第152回直木賞候補)
「八月の御所グラウンド」(第170回直木賞受賞)