【書評】ガリレオの苦悩

☆特長
天才科学者が難解なトリックの事件の解決を手伝うガリレオシリーズ第4作。
内海薫という女性刑事が登場。
草薙刑事の代わりに湯川博士に相談に行く役割に。
各章はそれぞれ独立していて関連性はありません。
短編なので、展開が速い。
☆感想
どの作品も分かりやすく、面白かった。
内海刑事の勘と推理の鋭さと、湯川博士は相変わらず理系っぽいカタブツですが、推理と実験が素晴らしい。
☆魅力
いつもの如く湯川博士がトリックを実験で証明して解決する面白さもありながら、それぞれの章の登場人物の人間模様に感動も。
☆おすすめの人
ガリレオファン。
ミステリー、謎解きの好きな女性。
(今回から女性ならではの視点が加わったので)

・第一章「落下る」(56P)
新登場の内海薫刑事の鋭い勘からの推理が見事に的中。
その推理に対して鈍い反応の男性陣。
女性特有の勘の鋭さからの推理が痛快。
この内海刑事の素晴らしさを具体的に、第五章で湯川博士がご本人にフィードバックしているシーンがあります。

・第二章「操縦る 」(99P)
湯川博士と、師と仰ぐ友永元教授、2人の「苦悩」と「心遣い」に感動。
「人の心」は、とてつもなく奥深い「科学」という湯川博士の最後の言葉が印象的でした。

・第三章「密室る 」(49P)
湯川博士の元同級生が、自ら経営するペンションの客の密室の謎解きを草薙を通じて依頼。
湯川が密室トリックのみならず、事件の真相を明らかにしようとすると、依頼は無かったことにと尻込みしだして…
そこにはある事情が…

・第四章「指標す 」(48p)
経済的に苦労しながらも地道に生活する母娘。
その母に強盗殺人の疑いが…
ダウンジングで事件の鍵となる犬の死骸を発見する娘。
湯川博士はダウンジングをどう断じるのか?
「神秘的なものを否定するのが科学の目的ではない。
彼女は自分自身の心と対話している。迷いを振り切り決断する手段として使っているに過ぎない。自分自身の良心が何を目指すのかを示す道具があるのなら、それは幸せなことだ。」
今回も湯川博士の推理が冴えているのは言うまでもない。
事件の真相や如何に?

・第五章「撹乱す 」(106P)
「悪魔の手」と名乗る何故か湯川博士を恨む自称科学者より、警察に犯行声明文、湯川博士に予告状が送られる。
湯川博士への挑戦のため、次々と罪のない人を殺そうとする犯人が腹立たしい。
共通する手口は、「予告や声明がなければ、事故死として見逃されてしまうトリック殺人」
犯人は…
自分の失敗を人のせいにする人生。
自分がうまくいかないのはあいつのせいという人生。
憐れ。
あっけなく湯川博士がトリックを解き明かします。